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  1. 考え方の『いろは』

私のルアー開発

先日の中国出張前に行った房総リザーバー豊英ロケの記事で書いたのですが、今秋ボルゾイ160という大型ジャークベイトがシマノからリリースされます。私が企画&監修したルアーです。

バス用のSPと、ソルト用のSが発売されます。

バス用のSPは8月、ソルト用のSは9月の発売を予定しています。
ルアーの詳細などは発売前に改めてブログで書かせて頂くのですが、今日はその前に私の釣具開発について深掘りさせて頂きます。

先日の房総豊英ダムロケをもってボルゾイ160の開発作業は終了なのでこれまでのプロトを整理したりしました。

釣具開発やルアー開発となると製品の謳い文句として良く、
『構想○○年』とか『開発期間○年』
のように『長い時間開発時間を掛けたこと』が素晴らしいとプロモーションに使われることがあります。
正直、個人的にこれ(掛かった時間)はほとんど無意味だと思っています。

というのも、メーカーや企業によって開発設備や環境は様々です。
試作サンプルを作る為に、自社内に切削機から光造形3Dプリンターがいくつもある会社もあれば、そういった試作作成機どころかデータ作成が出来る人材すら居ない会社もあります。
一言にルアーメーカーと言っても(規模、知名度関係なく)、開発環境は様々で、雲泥の差があります。

これを『開発期間』に転化すると、人材&設備が整っているメーカーであればハードルアー、一つのサンプルを作り上げるのに掛かる時間はしっかりルアーの形にするだけであれば2日もあれば十分です。本気出せば1日で出来るチームもあるはず。
一方で。データ作成(人材)も試作製造(設備)も自社内に無い場合、当然外注して作ってもらう必要があります。
そうなると私の肌感で一つのサンプルを作って貰うのに1ヶ月掛かるのは当たり前で、下手したら(外注先の混雑具合)では2ヶ月とかもあり得ます。
『10回プロトを作り直した』場合には、前者は1ヶ月の開発期間ですが、後者は約2年の開発期間になる。
開発環境が違う中で『開発期間』を製品の完成度に紐付けるのは無理があります。

せっかくなのでボルゾイ160の手元にある試作を並べました。下段は切削機やプリンターでの試作、上段は金型にいってからの試作。

今回のボルゾイ160を例にとると、ちょうど2年くらいが開発期間でした。
手元にある試作で画像の通りで、データ時点で辞めた(試作しなかった)ものや、見るに値せずシマノ社員が跳ねたものは含まれません。
これは単純なゼロからではなく『10年前にメガバスでカナタを作った』というリードがあった上での試作数です。本当のゼロから(薄みの160mmミノーを作るのが完全に初めて)だったらもっと増えたと思います。

『どうせ同じ試作を並べてるだけだろ』と思われたく無いので好きなだけ拡大して見てください。

開発期間の長さは無意味。
であると同時に、試作数も決して釣具の完成度に直結するとは限りません。
特にありがちなのが『ゴールや欲しい物がはっきりしない開発』は最悪です。
企画やプロデュースするプロや釣り人が『欲しい物(釣れる物)が明確』ならゴールは明確です。
一方で『なんとなくこんなのが流行ってるから』くらいで開発がスタートすると、誰も(企画したプロや釣り人本人も)ゴールが分からないのでいくら試作をしても完成しません。
作っている過程でトレンドが移り変わったりして『こんな機能も入れたい』とかなり出したら更に最悪。もうゴールは絶対出来ません。『どこで妥協するか』しか残された道はなくなります。

明確に理想や完成が見えているものほど、短期間で完成したりします。明確なゴールがあるから良し悪しが瞬時に判断できてしっかり前に進めるから。
過去の私の経験でいくと、今世界的に大人気なスイムベイト、マグドラフトは2.3回の試作でGOしたものだし、イーラと呼ばれるウナギ形状のルアーも試作回数は5回くらいだったと記憶しています。
もちろん試作を数十個作って上手くいったものもあるし、100近く作ってそれなりまでしか完成度が上がらなかった製品もあります。

金型に行くと大体鱗が入る。今の時代は切削試作やプリンター試作でも鱗入れられるけど少ないはず。

同業者の方だと、試作の仕上がり具合を見るだけでそのルアーの開発進捗具合はほとんど分かります。
後半になればなるほどもちろん弄れる自由度は減ります。大改造なんかは(作り直すのでなければ)無理です。
逆に言えば、各メーカーが『今開発中の〜』で雑誌やweb記事に載せているルアーを見るとだいたい『そのメーカーの開発環境(設備&人材)』も分かってしまいます。

当然、こんなことが一般的に外に漏れることはありません。
私みたいに中に入り過ぎた公の場に出ている人間が、記事に書くくらいしか表に出ることはないはずです。

今回の試作数や試作内容を見て『コイツとは仕事したくないな』と思う同業者の方もいらっしゃると思います。自分が欲しくて生み出したルアーにはめちゃくちゃしつこいです。自認しています。

私より釣りが上手い人、強いトーナメンターはごまんといます。私はプレイヤーとしては並の戦闘力しかありません。
一方、開発に関してはここまでやる人間、やれる環境作りを出来るのは自分しか居ないと思っています。

私を担当する開発チーム(ルアーだけでなく)には精神的にも肉体的にも凄い負荷を掛けていると思います。シマノにしろ BKKにしろデプスにしろ、付き合ってくれるメンバーには本当に感謝しかありません。
今日はボルゾイ160のプロト整理をしながら、ボルゾイを開発していたこの2年間の、そして10年前にカナタを作っていた時のことを思い出してこんな記事を書いてしまいました(笑)
特段意味はないんですが(笑)、トーナメンターや取材だけでなくこんなことも私は日々やっていると知って頂けましたら幸いです。

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