自身がロケやテストでバタバタしてしまっていたので、あっという間にTOP50遠賀川戦から二週間が経ってしまいましたが、この試合において一つだけ追記をしておきたいと思い、PCに向かっています。
巷では『青木大介復活!』的な見出しが溢れていたのですが、同じシリーズに参加していて、同じ三日間を戦った人間としてもう少し解像度高く皆さんに『私の見て感じたこと』をお届けしたいと思います。
まずはその前にちょうど一年半前の2024年1月のSDGお正月イベントで私が青木大介プロとお話しさせて頂いている動画をご覧いただきたいです。
繰り返しになりますが、この動画は昨年2024年の1月に撮影(ライブ配信)されたもので、青木プロの今優勝の一年半前のものです。
青木プロは2023年から国内トーナメントに復帰しており、翌2024年にTOP50シリーズに再昇格(復帰一年目で再昇格というトピックは今回、割愛します)。
そのシーズンイン前の動画です。
動画内では様々なことをお話しいただいたのですが(私の質問に真摯に答えてくれました)、その中でも、
・2023年国内復帰して様々なトーナメントで若者と戦えるように今のトレンドの釣りも猛特訓した。
・その中でなんとかTOP50には上がれたけれど、同じ釣りでは敵わないことも感じた。
・今期(2024年)のTOP50シリーズもそう簡単にはいかないと感じている。
・ただ、だからこそ『その先』を目指すつもりだし、それが出来ればおのずと日本一にもなれる。
こんな内容かなと思います。
個人的にはそう言い切れるのも凄いなと思うと同時に、その解像度の高さにも驚いた内容でした。
そしてそれを惜しみなく言葉にして残してくれる青木プロは誰よりもカッコイイとこの動画を何回見ても思います。
同時にこのダイワ社のTOP50密着動画も併せてご覧頂きたいです。(長いですが勝つ試合よりしっかり見ると面白いです)
内容は昨年のTOP50第4戦桧原湖のもの。
結論から書くとこの試合、青木プロは43位と下位に沈みます。
予選落ち5ポイント(参加点)。渡米前での桧原湖の青木プロといえばほとんどお立ち台で、私は何度も表彰台に立つ青木プロを見上げていました。
その桧原湖での予選落ち、参加点は個人的に衝撃でした。
動画内では(編集されてはいるけど)何度も、
・全く通用していない。
・踏ん張りもきいていない。
という言葉がしきりに本人の口から出ます。
個人的には『優勝争いできるだけ通用するか』という点よりも『踏ん張りがきかない』という表現がこの動画の最大の見所だなと思います。
『踏ん張り』とは何なのかというと、テクニックや読みが当たりきっておらず優勝争いや上位争いは出来ないけど最低限の仕事(スコアメイク)をすることを指します。
もちろんこの『踏ん張り』の位置は選手によって違うんですが、渡米前(2018年シーズンまで)の青木プロはこの位置がとてつもなく高い選手の一人で、『今大会、全然上手くいかなくて何とか凌いだわ』といって普通にシングル、下手したら5位で表彰台に居るみたいな選手でした。
個人的には『その順位がなんとか踏ん張った位置なの?』と何度思ったか分かりません。
さて、今大会に話を戻します。
今大会の優勝ルアーを見ると当然ですがディスタイル社の『ギーラカンス3&4インチ』に目が行きます。
これが青木プロを帰国後のTOP50、1勝目に導いたルアー達です。
ギーラカンスは青木唯プロが作ったルアーで、直前の艇王相模湖で松本幸雄さんが3キロオーバーをキャッチしたセッティング。
これも柔軟で凄いことです。以前の青木さんだとあまり見られなかったアクション(行動)に感じるし、それをたった数週間で自分のものにするセンスもズバ抜けてる。
今大会の青木プロのスコアを見ると、
初日 2922g 5位
2日目 1024g 13位
決勝 2250g 3位
となります。
当然、初日5位と決勝3位のウェイトが効いての優勝であり、そのウェイトを作り出したギーラカンス3&4インチに注目が集まって当たり前です。
ただ個人的には『2日目13位』が今大会最大のキーだったなぁと思ってリザルトを見ています。
上記した動画のように2024年桧原湖戦では本人の口から出ている『踏ん張りがきかない』という表現に繋げるなら、完全に踏ん張りがきいている状態です。
特にこの日は小さいながら2匹をキャッチしているはずで、特に2匹目のキーパーカツカツは終了時間が迫る中でのキャッチだったはず。(周りの選手談)
たぶん300gちょいちょいの魚だったはずですが、この一匹の『踏ん張り』がなければ約300g差で2位だった五十嵐プロに負けていたはず。
この2日目はどちらの魚もレッグワームでキャッチしているはずで、初日良かったギーラカンスで心中して終わらないところ、その上で踏ん張った順位が13位というが個人的には今大会の中で最も凄いなと思っています。
渡米前同様、日本トップの『踏ん張りも健在』で、更に『(今の釣りの)その先』にも進んでいる。
そして、その両方のMIXでの優勝だったと私は感じています。一言、強い。
遠賀川の試合って本当に難しいです。
過去の優勝を見ても基本的に初日がMAXウェイトで、日を重ねるごとにウェイトが下がり、最終日に何とか絞り出して逃げ切り。というのが慣例でした。
それはトーナメントエリアが広くないということもありますが、初日が良ければ良いほど、予選が良ければ良いほど、その釣りを捨てられないし引っ張られます。これは遠賀川に限らずですが。
それに唯一、抗い見事過ぎる試合を見せてくれたのが今大会の青木プロでした。
曲がりなりにも同シリーズで戦う選手として、シーズン途中で他選手を賛美する内容を書くべきではないのかなとも思います。
一方で、幼い頃から国内外のトーナメントフリークとして今回ほど面白い試合は早々無いし、それが『ギーラカンス凄いんだ!』だけで終わってしまうのは個人的に惜しいと思ってしまうので、誰かが残すべきだなと思って書き認めました。
青木さんや今江さんみたいなスーパースターは勝つことで魅せられますが、それが難しい私にとってそれでも国内トーナメントを盛り上げるには現場に居て、戦っている当事者だからこそ出来ることをするしかないなと常々考えています。
どこかの若者がこの記事を読んで将来『青木大介討伐』の一助になったら私はそれで幸せです。