今季、シマノ内のチヌブランド『ブレニアス』内でB74ML-Sというモデルをプロデュース&リリースさせて頂きました。
2022年にブレニアス最上位機種であるブレニアスエクスチューンB76MLというモデルがリリースされたのですが、こちらは私の意見を含めて様々なアイディアや意見が反映されて完成したモデルでした。
一方、同時期に開発はスタートしていて一年遅れでリリースとなったブレニアスB74ML-Sは私の意見を100%取り入れて完成しました。
開発期間は2年半ほどとなりますが、ブレニアスエクスチューンB76MLとほぼ同時期に完成はしていたので実際にテストしていた期間は1年半ほどでしょうか(逆サバ読み笑)
まずこのロッドについての話をする前にちょっとだけ昔話にお付き合いください(笑)
2005年頃。私が最も琵琶湖に通っていた頃ですね。
当時、最も私が投げるルアーがバイブレーションでした。具体的にはブザービーターと同TG。
使うロッドはエバーグリーン社のテムジン・エゴイストでした。表記にすると70Hです。
バイブレーション用ではなくヘビースピナーベイトのスローロール用(つまりバイブレーションよりも重たいものを扱う用)で、普通に限りなくジグロッドに近い使い心地です。
高弾性パツパツロッドなのでまぁとにかくバイブレーションでも飛距離は出るし、ウィードはスパスパ切れるし最高でした。
当時、大学生なので春休みとか夏休みとか一週間とか10日とか琵琶湖に居るんです。
特に広島の友人(高校時代の全国大会で知り合った)とは毎年琵琶湖待ち合わせで合宿していました。
そんな彼の愛竿の一つがノリーズ社ロードランナー(当時はNシス)のRR650MHでした。高弾性一択の時代背景でしたがモチモチのロッドですね。
一緒に釣りをしていて気付くんですが、同じバイブレーションでも私(エゴイスト)と彼(RR650MH)でもビッグフィッシュ(50UPとか)ならキャッチ率は一緒でした。ルアーはデカい口の中ですからね。外れようがない。
一方、キロ〜1500gフィッシュは間違いなく私の方がミス率が高い。この釣りは私の方が慣れてるし(友人は年1回くらいしか琵琶湖来ない)、枯れ残りウィードも私の方が硬いエゴイストで綺麗に切ってる。けど彼の方がミスなく釣る。
そこで気付いたのは口の中に入る率で、同じように、同じルアーを、同じフックで巻いても全然掛かり方が違う。
当時のバスロッドは高弾性、高感度、高操作性が正義の時代で、テムジンだけでなくバトラーリミテッド(ダイワ)にラグゼサーミス(ガマカツ)とかとにか業界自体が半端なくその方向の探求でした。
結局、その後私は釣り方を絞ってロードランナー(Nシス)を630LB、630MB、650MH、660HBと揃えました。
面白いことにその反動かのように各社その後はちょっと弾性率を抑えたシリーズや方向性を探求するようになる(テムジンクロスファイヤとか)。
今のチヌゲーム(特にフリーリグを中心としたソフトベイトの釣り)は間違いなくもりぞーさんを中心に回っています。
過去にSNSやブログでも書きましたが、私自身もシルベラード、同プロトタイプ×2、シルバーウルフMX、同AIRと勉強を兼ねて買って使ってきました。
もりぞーさんはブレがないのでメーカーが変わっても方向性は一緒のもの作りだし(これ簡単なようで難しいです)、ロッドだけでなくフックやソフトベイトも『そのロッドだとそうなっていくよな』というコンセプトです。
同業者(競合他社)の私としてはどうやって自身が展開していくかは非常に難しいところでもあって、似たようなものを似たように作って似たような展開をしていくのが一番簡単です。資料は沢山ありますからね。
ただ少なくとも地域差やフィールド差はあるし、その方向性の限界(所詮二番煎じという意味で)もあります。
そんなことを考えながらブレニアスB74ML-Sは作りました。
そこで試行錯誤の一つが先程書いたエゴイストと650MHの話に繋がるのですが、ルアーフィッシングの対象魚の中でおそらく一番『バイト数』と『キャッチ数』に差が出るのがクロダイやキビレだと思います。
そしてやはり『アベレージサイズほど』フックアップ率は下がる。
逆に言えば大きい魚ほど『タックルのストライクゾーン』は広くなると思います。一般常識的に『大型=難しい』と思われがちですが、少なくともチヌではそれは当てはまらないと思います。(数が少ないから釣れ難いってのとはまた別の話です。バイトしたらって意味)
つまり『これだけ掛けられないなら口の中にルアー(フック)を入れることだけ考えて作ってみるか』となったわけです。
特にもりぞーさんプロダクトは軽量で感度が高く操作性の高い方向性なので差別化する意味でも良かった。
最初作ったプロトなんかはソリッドティップが柔らか過ぎて釣りにならず(汗)
単純な硬さだけでなくソリッドティップの『硬さ×長さ』で全体の使用感は決まるのでこの二つのバランスが大切。
単純に硬くてもソリッドが長ければ全体としては『柔らかく』感じるし、逆にソリッド自体は柔らかくても短ければ『硬く』感じる。
最終的にはそれなりに硬いソリッドを長く使って調子を出しています。
これには理由があって、単純に柔らかくすると根掛かりは確かに増えるのである程度の硬さは必要で、その上で食い込みしろを作りたいので長くして柔らかさを出すイメージです。
なのでブレニアスB74ML-Sのティップは柔らかいのではなく正確には『(ソリッド部が)長い』です。
口の中にルアーを入れることが目的。
ロッド→フック(もっと言えばリール、ライン、ルアー全部)も一貫していて、口の中にルアー(正解にはフック)を入れることを主眼に置いて作っています。
もちろん『ティップまで硬いロッドで抜きながら(スラック上手く作りながら)アクションさせれば良いじゃん』って意見もあるんですが、私のやっている浜名湖(主に岩礁帯や牡蠣瀬)では抜くとやはり引っ掛かる(汗)
抜かずに巻き切る、アクションさせ切る必要があってそうなるとロッドの力に頼らざるを得ないです。
柔らかくて引っ掛かりそうって言われたりもするんですが、硬いからそれを補うために抜かなきゃいけない方が引っ掛かるってのが『両方作って実際に試した』私の結論でした。
勘違いしてほしくないのは、もりぞーさんのモノ作りより私の方が正しいなんて言うつもりはないです。
当時、今江さんが作ったテムジンも、今も昔も変わりない田辺さんのロードランナーもどちらも素晴らしいプロダクトです。
そこには釣りのスタイルやフィールド条件、ターゲットのアベレージ、掛かるプレッシャーなど様々な要素が絡んで生まれてきた背景があります。
私にはこの方向性にも未来を感じて、少なくとも自分には武器になると思って完成させただけです。
この後、様々なメーカーからシルベラードやシルバーウルフ『みたいな』ロッドは間違いなく出てくると思います。
ただ少なくとも私は脳死開発でそれはしたくなかったし、私なりに戦えると思った仕様がこのB74ML-Sです。