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  1. フックの『いろは』

トリプルフックの基本その2

前々回、トリプルフックについて改めて書いた記事をUPしました。

要約すると、
・色々使い分けるよりはまず、オールマイティなタイプのフックを太い、細いくらいで二種類使い分けるくらいの方が良い
・レギュラーシャンク、ラウンドベンドが個人的にはオールマイティ
・特例としてラウンドベンドのロングシャンクはダートタイプのジャークベイトに向いている
こんな三点でした。

今日は近年多いベンドが内傾していて、針先が内側を向いている針についてお話ししていきたいと思います。
まずはじめに前回、ガマカツのRB(ラウンド)シリーズを例に出したので、今日はSP(スプロート)シリーズを例に出すと思われるかもしれませんが、SPシリーズに関しては上記した『内傾しているフック』には該当しないと思っています。

上がガマカツ社のSP-M、下はRB-M。どちらも同サイズ。

画像を見ていただいたら分かりやすいのですが、RBシリーズとSPシリーズの同サイズを比較するとベンド形状こそ違えど、この二つのフックはゲイブ幅、ポイント位置&角度がほぼ同じです。
つまり掛かる、刺さるの釣り針の基本性能に関してはほぼ同じ性能で見た目が違うだけのはずです。(厳密には形状違いで変形時の強度に差があったりするかもしれませんが感じたことはないです)
ただこれはたぶんガマカツ社は意図的にやっていると思われて、ショートシャンクの存在するRB-Mを除けばRBシリーズはロングシャンク、SPシリーズはレギュラーシャンク長です。
だからこのフックに関してはそういったシャンク長での使い分けがベストだと思います。

さて厳密にベンドがしっかりと内傾していて、フックポイントが内側を向いているフックはいったいどれだけあるのかというと実はかなり少ないです。

私が良く使うのは左から早掛、トリニティ、トレブルEWG、KVDエリート。

・早掛/FINA(厳密にはこのフックは内傾はしておらずフックポイントのみ内向き)
・トリニティ/odz(厳密にはそこまでショートシャンクではない)
・トレブルEWG/ガマカツ(国内verトレブル21の処理違い)
・KVDエリートシリーズ/マスタッド

ここらへんが上記したベンド部が内傾していて、ポイントが内向きに該当します。
ではオールマイティなレギュラーシャンク長のラウンドベンドタイプとの違いは何なんでしょう。

そもそもことの発端はクランクベイトです。
ずんぐりむっくり(全長が短い)でボディも太い(幅広い)ものが多いクランクベイトは当然、その太いボディから左右にフックポイントを出したいがために大型のフックを取り付ける必要があります。

青線がシャンク(長)、赤線がゲイブ(幅広い)。

そもそもフックのサイズって何を基準に表記決定されているかというと、おそらくほぼ全てのメーカーがゲイブ(赤線)で決めていると思います。
ゲイブが幅広になればなるほど番手は大きくなります。同時にシャンク(青線)も長くなります。

先程のクランクベイトに話を戻すと、クランクベイトの幅広ボディからフックポイントが出るように大きな番手の(ゲイブ幅が広い)フックを選ぶと、比例してシャンクも長くなります。
すると、ずんぐりむっくりで太短いクランクベイトでは当然、シャンクが長くなりゲイブも広くなるので前後のフックが絡みやすくなります。
かといって絡まないようにするとフックポイントがボディから出ない。さぁ困った。

左はクランクっぽいRC2.5DD、右はシャッドっぽいDEEP-X200。全長は同じくらい。

クランクベイトといっても形状は様々。
画像のDEEP-X200のように、その1で書いたようなオールマイティな#4番との組み合わせで十分なクランクベイトも沢山あります。
逆に左のRC2.5DDはKVDエリートの#2番でベストマッチ。
このようにずんぐりむっくりしたクランクベイトらしい形状をしたクランクベイトに、その幅に合わせたオールマイティな#2番を付けるとゲイブ幅だけでなくシャンク長も長くなるため、前後の針が絡むことになります。

加えて、ルアー関わらずとにかく釣り針を魚に掛けたい時。
当然、単純にフックサイズを大きくしたら魚に『掛かる』可能性は高くなります。と、同時に糸絡みや針同士が絡むことは容易に想像できます。
そこで生まれたのがゲイブ幅はそのままにシャンク部だけショートにして、使い勝手はそのままに針を1番手大きくできるフック。

パッケージと同じく左から早掛、トリニティ、トレブルEWG、KVDエリート。

これで幅広なクランクベイトに向いていたり、掛け重視の針が完成したように思いますが、逆にゲイブ幅だけ広くして『掛かる』ようにすると問題も発生します。
幅が広くなるということはフッキング時、一番最初に針に力の掛かる際の力点であるアイから距離的にもベクトル的にも凄く離れた位置に針先がくることになります。
一言で言うとフッキング力が下がる。せっかく『掛かる』ようにはなったけど『刺さる』力は低下する。
そこで距離は仕方ないとしても少しでも力点であるアイにベクトルを向くようにして、力のロスを軽減させるため内傾(フックポイントが内側を向く)させる形にする。
そうやってショートシャンク、ワイドゲイブは完成しています。

カバー周りで使うために浮力確保のためにファットなものが多いシャロークランクにはこのショートシャンク、ワイドゲイブで1番手サイズを上げるのが定石。

バサーさんに私が数年前に書いた記事から抜粋。ショートシャンク、ワイドゲイブの最大の弱点の一つ。

とはいえ内傾させたとしてもショートシャンク、ワイドゲイブタイプのトリプルフックは諸刃のフックです。
基本、フックサイズは上がっているので(だから掛かる率も上がる)、根掛かりは増えます。当然ですよね。
加えて、画像の様に同一トレブルフックのうち二本以上が同時に掛かるとお互いが邪魔をしてどんどん刺さりにくくなります。更に刺されば刺さるほど穴をお互いに広げ、無理やり傷口を広げながら入っていくので当然抜け易くなります。
せっかく『掛かる』針を使ったのに『刺さる』ことができなくて外れたなんてことが起き得ます。

シャロークランクの場合はフロントだけショートシャンク、ワイドゲイブタイプで番手を上げて、リアは単純に番手を上げちゃうのもオススメ。

個人的にはファットなクランクベイトでもボディが邪魔をして二本が掛かることの少ないフロントはショートシャンク、ワイドゲイブで大きくし、逆にリアは糸からも遠く絡みが少ないのと、ボディが邪魔しにくいため同時二本が発生しやすいのでレギュラーシャンクで番手を大きくしてしまうという組み合わせも良く使います。

あとはゲイブや針先も内傾しているからバラシが減るって方もたまにいらっしゃるんですが、個人的には刺さりきったら形状関係なく針ってよっぽど抜けないと思っているので、基本はどんなフックでも刺さっていないだけのような気がします。
(チヌなんかの一本ものの針で更に口がメチャ硬い魚はチヌ針みたいに内傾しているから深く剔れてバレにくいはあると思う)

昨年から試しているデコイのYW77。ここまでやると一定効果は感じたけど、明らかに刺さりにくくなったと感じた(笑)ミスバイトが増える。

早掛とYW77を比べるとこんな感じ。

そして、最後に暴言を吐くと。
今の技術だとワイドゲイブタイプは(刺さりにくいから)という意味では既に内傾させる意味はそこまで必要ないと思ってる。
というのも、そもそもは10年以上前に『フックサイズをデカくしてシャンクを短くすれば、実質今までより大きいフックを付けても絡まないし、掛かり易くなる』→『力が逃げて刺さりにくくなるから内傾させる』がこの形状単純の経緯だったと思うんですが、この10年ちょっとで針先硬度にしても表面処理にしても凄い進歩して『内傾させて貫通力を上げる』以外の方法が増えてきた。

右はBKKのスプロートタイプのオリジナル。STシリーズなんかと一緒の形状と思って下さい。左はすでに2年作って試してる黒田要望フック(笑)

もうさ、線材や表面処理を目一杯刺さりやすいもの使って内傾させずにシャンクを短くしただけで良いじゃん。今の技術なら。
根掛かりだけはスキルでカバーするとして(笑)、そうすれば『掛かる』し『刺さる』フックになるはず。

ということで、最後は宣伝になっちゃったけど(汗)
つまり、
・ショートシャンク、ワイドゲイブは1番手上げられるのでクランク(みたいなファットなやつ)&掛けたい時向き
・刺さるのは苦手、特に二本掛かったら最悪
・そしてこれからは単純にショートシャンク化するだけがくる(と勝手に思ってる)
というお話でした。
前回も言ったけど、下手に迷うくらいなら基本、レギュラーシャンク長のラウンドベンドタイプで十分です。

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