リール、特にベイトリール選びにおいて『純正かカスタムか』って昔に比べて遥かに選択肢の幅が広がったと思います。
それは沢村さんのKTFを初め、ZPI社やアベイル社など様々なサードパーティメーカーが様々なカスタムパーツをリリースしてきたからで、ベイトリール選びでは欠かせない要素になっていると思います。
例えば初代アルデバラン(2009年〜)は流石に15年前の筐体なのでそのままオリジナルで使うのは物足りなさを感じますが、カスタムパーツを組み込めばまだまだ第一線で使うことが出来るし、事実TOP50シリーズなんかでもまだまだ現役で使われているものが沢山あります。
もちろん『ベース機の完成度の高さ』あってこそですが、カスタムパーツのお陰でパフォーマンスが著しく上がっている機種は数知れません。
今現在、このブログをご覧の方で一体どれくらいの方が当時を記憶しているかは分かりませんが、2012〜2017年頃って釣りブロガーの最盛期だったと思います。
ヘビヌマさんやkenDさん始め、KDWの欠塚さんもその中の一人でした。
当時、そういったブログインフルエンサー的な人たちのコミュニティ?があって、何故か私も名を連ねていました(笑)
KDWの欠塚さんとはその頃からのお付き合いです。
KDWといえば代表作はオフセットクラッチです。
KTFやZPI社、アベイル社がスプールを代表作にしているのに対し、異色のオフセットクラッチが代表作なのがKDWです。
私の中でKDWオフセットクラッチに一気に火がついたのは18バンタム用からだと認識していて、当時欠塚さんご本人から3台分送られてきたので試しに使ったことがあります。
既に明言したことが何度もあるので書きますが、『私には』全く合いませんでした。すぐに外しました。
何が合わなかったかというと、私はKDWオフセットクラッチだと『クラッチが切れません』。
画像は当時送って頂いた物そのものですが、見たら分かる通り一つだけ開けて(使って)、残り二つは開けてすらいません。
決してKDWオフセットクラッチの完成度が低いわけではありません。
ただ私は常に3フィンガーか4フィンガー(フルフィンガー)でベイトタックルを握ります。キャスト時もリトリーブ時もシェイク時もです。
つまり『常にパーミングしている状態』なんですが、この使い方だと大半の人がKDWオフセットクラッチではクラッチが切れません。
逆に2フィンガーや1フィンガーであればKDWオフセットクラッチでクラッチを切るのは容易です。そういった人の方が多いからこのクラッチが人気なのも重々承知しています。
なぜパーミングした状態(3フィンガーや4フィンガー)でキャストまでするかと聞かれれば『握り替える時間が勿体無いから』です。
たぶんパーミング状態のキャストって手首が固定されるので投げ難いはずです。
でも握り替えが無い分、着水後直ぐにアクションに移せるし、フォールバイトも拾える。キャストのし難さを除けば理に適ってるはず。
私も最初は投げ難かったはず(記憶にないけど)、でも練習してパーミングでのキャスト精度を20年以上前とかに上げたはずです。
なので私の中で『パーミングした状態で投げられない(クラッチ切れない)はどう考えてもデメリット』でした。
特にキャスト回数が多い人(=ショート〜ミドルキャストが多い人、シャローゲームをする人)はこれに当てはまりやすかったはずです。
欠塚さんもそんなのは重々承知していて、『パーミングしながら所作を行う人にはオフセットクラッチは適さない』と何度も公言しているし、良い悪いの話ではなく、合う合わないの話でした。
そんな中、欠塚さんは何度か『パーミングして扱えるクラッチ』のトライ&エラーをしていたのは知っていて、今年の10月に見せて貰ったその中の一つがかなり良い感じの出来でした。
私のプラに同船してくれた際に『どう思います?』と意見を求められて、使わせて頂いたのですが非常に良かったです。
3フィンガーはもちろん、4フィンガーでも切れる。むしろクラッチ位置が高いので4フィンガーだと純正より使い易い。そんな使用感でした。
ただ個人的に『ダサいし重い』って正直に伝えさせて頂きました(笑)
特に重さに関してはリール開発者が死ぬ気になって0.1gを各パーツで削りにいっている中で何gもここだけで重量増になるのは私はナンセンスだと思っています。
倍の重さのクラッチ。
もちろん『そんなの気にしない』って方がほとんどなのは重々承知しています。釣果にも大した影響はないはず。ただ私はナンセンスだと思っています。
純正が樹脂に対してこのクラッチは金属であること、更にクラッチ位置が高いのだから同じ樹脂で作っても重量増は免れないことも分かっています。
ただ個人的には倍以上の重量増は『無し』だなって感じでした。
そこで欠塚さんが『徹底的に軽量化してみる』といって作ってきたのが次のサンプルでした。
これは最初持った感じも、(クラッチを)切った感じも凄く良くていくつか作って送って貰ったんですが、途中からちょっと違和感を感じ始めました。
パーミングしながら投げられるということは『=クラッチ位置が高い』ってことなんですが、なんか余分な箇所も大きく感じて大きいリールを持ってるみたい。
極端な話『カルカッタ100のはずなのに200持ってる』そんな感じがします。
よくよく見てみると赤丸部分(親指付け根)がボディから離れてクラッチに乗ってしまってるからパーミングし難い。
削っていってなんとなく分かっていって切削データの作り直しをしてもらいました。
これでパーミング時の『大きいリールを持ってる感』は無くなりました。素晴らしい。
正直、こういった切削物は原材料費よりも『手間賃(時間当たり生産量)』の方が高いので、最初は『売らない(というか手間掛かり過ぎて売れない)』だろうなと思っていて、完全な欠塚さんとの自己満足で遊んでいたはずなんですが、ここまでやったからには売りたいってことで来年KDWからちょっと作って販売するそうです。
値段は知りません(笑)凄い値段になるはず(笑)
売るとなったら性能に関係なく見た目は整えるべきというのが私の考えなので、最後にちょっとだけ穴埋めの希望を伝えました。
『黒田さん使うとしたら何色が良いです?』と聞かれたので『別にドレスアップしたい訳じゃないから私は20メタに合う色と22メタに合う色以外必要ないっす』とお答えしていたらそれぞれに合う色をアルマイトしてくれて送ってくれました。
繰り返しになりますがここまで手の込んだクラッチが一体いくらになるのか私は知りません(笑)
色々アドバイスさせて頂きましたが売れるかどうか責任とれません(笑)
ただ現状、『パーミングしたまま全てを行う』ことを考えて生み出された唯一のクラッチだと思います。
その為に発生する重量増などもほぼゼロです。
私のようにパーミングしたまま全てを行う方にはもちろんですが、リザーバーや霞ヶ浦水系で『キャスト数は多いけどキャストの度に握り直していた』って方にもこのクラッチでパーミングキャストを覚えてみてもらえたら良いんじゃないかなと思います。
おまけ。
欠塚さんに『切削前のアルミブロック実物が一つ欲しい(黒田コレクション)』とお願いしたら一つ送ってくれました。
重量は約85gです。
ここから削って上記クラッチが『たった一つ』作れます(笑)
85gのブロックで出来上がりが2.8gってことは82g捨てるんですね。97%が廃材(汗)スプール作るより捨てる部分多い。
KDW史上『最も生産効率が悪いカスタムパーツ』だそうです。