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  1. ルアーの『いろは』

シマノ ボルゾイ160SP/S BORZOI160SP/S

本日のブログではちょうど明日くらいから店頭に並ぶ(はず。たぶん。)のボルゾイ160(シマノ)について、詳細記事を書き残しておきます。
同時に自身のYouTubeチャンネル(クロチャンネル)でもボルゾイ160についての動画をUP済みです。よろしければそちらもご覧ください。
また本ブログも動画もシマノオフィシャルでは書けない、お話しできないことが中心です。基本スペックなどはシマノ公式HPをご覧ください。

左ボルゾイ160SP(サスペンド、バス用)/右ボルゾイ160S(シンキング、ソルト用)

今回、シマノから私が企画・監修したボルゾイ160という大型ジャークベイトが発売されます。
バス用のSPモデルは冒頭で書いたように明日くらいから、ソルト用のSモデルは一か月遅れの来月9月の発売です。
メガバスからシマノに移籍してちょうど10年なのですが、この10年の中で私が最も気持ちを入れて作ったシマノルアーであることを約束します。

そもそも今秋、自身が開発に携わったインショア用ルアー(ボルゾイはバスソルト両方)が三種類登場します。
・MDザンバーノ95S(95mmミドルダイバー。MDザンバーノ115Sの小型化)
・MDラウドジャーク120S(120mmラトルインミドルダイバー。ラウドジャーク120Sのミドルレンジ版)
・ボルゾイ160SP/S(160mmフラットサイドミノー)

上記二つは既にMDザンバーノやラウドジャークを知って頂いている方が多いと思うし、そのサイズ違いやレンジ違いです。
その中でボルゾイ160だけ全く違う経緯で生まれています。

左カナタ鮎160(メガバス)/右ボルゾイ160(シマノ)

今回のボルゾイ160は、自身がちょうど10年前の2016年にメガバスからリリースしたカナタ鮎160の焼き直しとして生み出しました。
もちろんすでにメガバスとは契約状態には無いし、ロイヤリティなんかもとっくの昔に終わっています。
なのでここ5,6年はカナタ(及びカナタSW)を普通に買って使っていました。SNSの投稿なんかでもちょこちょこ登場しているはずです。

そんなカナタをいくつかの理由があって今回、ボルゾイとして個人的に生み出し直した形です。

カナタの開発理由や開発経緯は当時(2014~2016年頃)の当ブログの詳細記事か、メガバス社YouTubeチャンネルに残っている当時の動画を見て頂くのが最も早いので、ここでは簡単に記しておきます。
カナタ発売前の2013年頃、私はメガバス社内でアイスライドと呼ばれるS字形ビッグベイトや、今やアメリカでも大人気のスイムベイト・マグドラフト(5~10インチ)の開発を担当していました。
所謂『ビッグベイト』というルアーを使えば使うほど二つジレンマがありました。
まず一つは『専用タックルが必要であること』。
そしてもう一つが『釣りが遅くなること』でした。
ビッグベイトはそのルアーの大きさとは裏腹に、釣る為の扱い方は実に『フィネス(繊細)』な場合が多いです。
『スピード』とは無縁なケース(ルアー)が少なくなく、スピーディーに連続アクションさせるのは難しいケースが少なくありません。
加えて『専用タックルが必要』な為、扱うにはロッドは長く硬く、リールは大きく重たい、ラインは太く抵抗も大きいです。
これを長時間、素早く動かすことは非現実的です。

そこで当時『ジャークベイトを大きくする』というコンセプトで開発を始めたのがカナタのスタートでした。

2016年のブログから転載。一番上が製品版カナタ。下二つは初期試作。

当時のブログにも書いていますが、手始めにビジョン110を手直しして拡大しただけの試作は50g超で『ビッグベイトにならないように作ったのに出来上がったのはビッグベイトと変わらない自重のミノーだった』のを今でもよく覚えています。
シルエットや存在感を損なわないため、体高と長さを固定して自重を軽くするには当然『ボディを薄くする』しかありません。
どんどん薄くしていったカナタは最終的に110mmのワンテンよりも薄いボディになりました。
完成したカナタの自重は32g。MHアクションのロッドがあれば扱えるビッグベイトミノーとして完成しました。

限界まで薄く、そしてそのボディに特注のタングステン球を3発搭載したこのミノーは開発動画内で『遥か彼方までぶっ飛ぶ』という表現を私がした為に、それを見たメガバス伊東由樹社長が『黒ちゃん。名前カナタにしようよ』と命名してくれた経緯があります。懐かしいです。

ただこのカナタですが、発売後に作った自分自身が欠点を見つけてしまいます。

初期カナタ。柱(ボディを跨ぐ支え)は前方一つだけ。

ほとんどの人が知らないと思うのですが、カナタは初期モデルと後期モデルが存在します。
上記画像は私の手持ちの初期モデル。2016年に生産したものは全てこの仕様です。
上記したように『完全オリジナル』としてカナタは生まれたので、比較するサンプルや競合製品は一つもありませんでした。2020年にレアリスジャークベイト160が出るまで160mm薄型ジャークベイトはなかったはず。
その為、こんな形のルアーの強度基準や経年劣化が不明瞭でした。
自重を軽くするためにボディは出来る限り薄く。でも飛ばすために特注タングステン球は3つ。スローフローティングにする為に空気室は出来る限り確保する。
その為にはできる限りボディ内の柱は少なくするのが理想でした。柱が増えれば増えるほど自重は重く(プラスチック分)、浮力は低く(空気室が小さく)なりますから。
そこで『柱一つ』でしたがこれが仇になります。
上記画像のタングステン球も一番後ろの一つが途中で止まっているのが分かるかと思います。綺麗に全て前まで移動していませんよね。
一言でいうなら『強度不足』で長期間使い込んだり、熱膨張&収縮を繰り返すとボディが僅かに歪み、運が悪いとこの状態になります。
もちろん製造公差があるので全てがなる訳ではありませんが(ならないものがほとんどです)、2016年に出荷した約1万個くらいがこの初期型のはずです。
私の手元にも20個ほどこの初期モデルがありますが、使い込んだりもしているので今も生き残っているのは5,6個です。

現行モデル(後期モデル)は柱が4倍の4か所に。

2016年末には修正を掛けて、翌2017年分からは現在の現行モデル(後期モデル)になっているはずです。
現行モデルの柱は4か所。これは単純に1か所→4か所で強度4倍という話ではなく、乗算的に強度は増すのでもっと強度は向上しています。
一方で当時、色々と試し『この柱の数が限界』というのも事実で、これ以上柱を増やせば重心位置や空気室の浮力が大きく変わりすぎる。ということになります。
事実、スローのタダ巻きや動き出しはやはり今でも空気室が最も大きい初期型が秀でていると思います。

ただ同時に別の問題が2017年頃から生まれてきます。
上記してきたようにカナタ鮎160は当時、ブラックバス専用として私が企画し生み出しました。
テスト時から今まで、メインタックルは6.6ft前後のMHアクションにフロロの16~20lbが基本タックルです。
今現在、カナタにしろボルゾイにしろ私がバスフィッシングで使っているのはエクスプライド165MH-LMにフロロ18lbがベースです。
このタックルで『問題なく扱いきれる』ことが条件でした。

一方カナタ発売から1年ほど経つと、飛距離やアクションに魅力を感じてくれて『ソルトでの使用』をするアングラーが現れます。
中でも当時、メガバスソルトで契約していた新潟の本間君(現在もシーバスシーンの第一線で活躍中)が沢山のランカーシーバスをカナタでキャッチしてくれて、日本海側で少しムーブメントになっていました。
その頃、既に私はメガバスとの契約を終えていましたが、Fショーなんかで本間君に会うと良くカナタの話をしてくれていました。
その中で彼が良く言っていたのが『黒田さんカナタめちゃくちゃ良いんですけど、ソルトで使うとやっぱり強度が足りないです。釣りまくるとウェイト詰まりやケツ割れ、ヒートンが抜けたりが起きることがあるし、何よりもシンキングが欲しい』という内容でした。
私は100%ブラックバス用として生み出したので、カナタは極限までボディを薄くしてそもそももう詰めるウェイト箇所がありません(だからシンキングに出来ない)。
加えて、彼らは時に10ftオーバーの硬いロッドのフルキャストで100mとか飛ばすのが日常なので、そのそもボディも重心移動のテール部もそんなのに耐えるようには端から考えていません。
カナタのエイト管は通常ブラックバスより若干太い1.0mmです。ただ彼らがシーバスや青物で常用するような1.2mmなんて太さじゃない。(アイの0.2mm差は強度倍半分くらい違います)
後にメガバスからカナタSWとして太軸フック搭載でSW用カラーに塗られたモデルが登場しますが、基本内部構造は一緒のはずです。

左カナタSW/右ボルゾイS
もちろんカナタSWも私自身沢山釣らせて頂きました。

ここまで書けば凡そ分かるかと思いますが、ここら辺を『いつか全てやり直したルアーを作りたいなぁ』と思っていて10年越しに生み出したのが今回のボルゾイ160です。
なので『対魚』という意味での基本コンセプトはカナタから変わっていません。
大きな餌を補足している個体、大型の個体に対して、ビッグベイトでは攻略できない条件下で登板させてほしいルアーです。

今年3月の房総リザーバーロケでの魚。大きさ、お腹を見てもそういったものを捕食していると思われる個体。

もちろんその上で、前回の教訓を生かして全てを設計していきました。

ボルゾイ160は背中側に計8か所の柱を立てました。

10年前より気候変化が激しい昨今、熱での膨張&収縮で変形しないように後期型カナタよりも更に多くの柱を立てました。初期型と見比べるとビックリいすると思います。

フロントアイも大型化。

ソルトで使われることや、BKKファストスナップのように少し変わった形状(線径)のスナップでも問題なく着脱出来、かつ動きを損なわないようにフロントアイは大型化。
単純に大型化すると動きが悪くなりがち(安定しない)のですが、遜色無く仕上げています。

その他アイもそれぞれ最適化。

その他のアイも、カナタは1.0mmエイト管1種類でしたが、強度を高めるためにボルゾイには1.2mmを採用し、箇所によっては重心移動の妨げにならないようΩピンなども採用しています。単純にパーツ点数増えるから製造面で考えれば嫌われるんだけど性能第一です。

左側は初期型プロト。当初はもう少し体高を下げるつもりでした。

強度や飛距離を優先すると本来は少しでも体高を下げたいところなんですが、最終的にほとんど同じ体高にしました。
160mmという長さに加えて、その体高の高さがあってこそシルエットが大きくなるし、大型ベイトを模せます。
高さを低くしたら意味がない。

左ボルゾイ160SP(サスペンド、バス用)/右ボルゾイ160S(シンキング、ソルト用)

自重はバス用のSP(サスペンド)モデルで33g、ソルト用のS(シンキング)モデルで36gです。
明確に一つのボディでSPとSを両立させています。

アクション調整は切ったり貼ったりの連続。後方に浮力を持たせたり、喉仏を加えたり、腹部に重心を集中させたり。

過去にも書いていますが『開発期間や試作数=良い製品』とは限りません。
開発期間〇年とか、試作数〇〇〇個とか一見凄く見えるけど、本当に明確に欲しいもの、良いものが見えている製品は試作数は少なく済みます。理解度も高く、ゴールも明確だから。
そんな中で、シマノに移籍してからはたぶん最も多くの試作を作ったルアーだったと思います。
明確にカナタという競合製品が居たので、妥協せずに臨みました。

最後は331と332(リップが少し違う)で悩みました。どちらも凄く沢山釣った。

ソルト用となるボルゾイ160Sに関しては、いつもインショアで行動を共にする東京湾サニーガイドサービスの家田船長、大阪湾シーマジカル角井船長多くの意見とテストを共有してくれました。

強度テストの最後は角井君がヒラマサで使ってくれた。

私のマダイ記録はボルゾイ160Sがかなえてくれました。ロケ中にボルゾイを襲った85cmの特大マダイ。

私のサワラ記録も今現在、プロトのボルゾイ160Sでキャッチしたものです。

ランカーキラールアーとして、バスでもソルトでも私の中ではなくてはならない存在になりました。
10年前にカナタを作っていたまだまだ未熟だった頃を思い出しながら、納得いくまで作りこむことが出来ました。

『BORZOI』は時速50kmで走り回る大型の狩猟犬から名前を取りました。
今シーズン皆さんの狩りに連れて行ってもらえたら幸いです。

ラスト追記です。
今回のボルゾイ160SP/Sはどちらもメインウェイトにタングステンを使用しています。
シマノ独自の重心移動ジェットブースト1.0の筒状ウェイトもボルゾイ専用タングステンウェイトです。
ボルゾイは3000円弱でリリースされますが、皆さんご存じのレアメタルの高騰&輸出規制により今年、今回の生産が最初で最後になる可能性が濃厚です。来年以降、万一生産の場合恐ろしく値上がりしないとまず無理です。なので生産は出来ない可能性が非常に高いです。さすがに5000円じゃ買う人ほとんど居ないはずです・・・(汗)
『それ分かっていて何でタングステンで作った』って話なんですが、絶対に性能を落とさずに世に出したかったんです。10年前作ったものに負けないものにしたかった。
来年以降、再生産が叶わなくてもこれで良いです。

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